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Kansai Quick Review

京セラ美術館に開催されているアンディ・ウォーホル・キョウト展は、同アーティストの早期作品と日本旅行期間中に作ったスケッチや記録写真を中心に、プライム期の各ジャンルや形式の作品も点在しています。冒頭の説明文に「the creative and queer elite」という英語の言葉は日本語では「クリエイティブな才能に溢れた性的少数者のエリート」と対応し、ウォーホルと彼の作品における肝心なクィア性を「ウォーホルはどんな人なのか」を説明する一言に止まり、作品に内在するクィア性は言及されず、残念ながらこの数十年ウォーホル作品にまつわるクィア研究の成果は無視されてしまったと思われます。全体的にも、ウォーホルのキャリアの一般的な紹介に他ならず、焦点を当てにくいと思います。同じく今年にリリースされたノンフィクション・シリーズ『The Andy Warhol Diaries』(ネットフリックス)は、アプローチや焦点の明確された作品として挙げられます。

大阪中之島美術館と国立国際美術館は『すべて未知の世界へ—GUTAI 分化と統合』展を共同企画しています。具体美術協会のメンバーの作品を「分化」と「統合」という二つのパラレルしながら被る部分もある文脈の中で整理し、2つの会場でそれぞれ展示しています。作家数・作品数が限られた中で、ある作家による同じ手法で作られたいくつかの作品は両方に出展し、鑑賞者にとっては重複感がなくはないと思われます。翻って言えば、このような構造の中で、二つの展覧会はいかに相互作用するのか、対話・補完できるのかといった点はまだ課題として残っているのでしょう。この視点から見れば、もうちょっと距離を取った兵庫県西宮市大谷記念美術館は、開館50周年記念展・『Back to 1972 50年前の現代美術へ』展では同じく具体美術協会を取り扱いますが、「1972」という時代の軸を押さえた上で具体美術協会当時の活動からその前後の経緯も紹介し、その同時代のできことやほかのアートシーンも紹介したので、具体のみならず、その時代背景も鑑賞者にわかってもらえるでしょう。

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