試練 |『サントシュ(Santosh)』
- 野水

- Nov 30, 2024
- 2 min read
Updated: Oct 23
2024 / 120分/ インド、イギリス、ドイツ、フランス

映画『サントシュ(Santosh)』は、未亡人であるサントシュ(シャハナ・ゴスワミー)が、亡き夫の警察官職を引き継ぎ、女性、カースト、宗教、そして警察内部の腐敗といった複雑な問題に直面する姿を描く。インド社会の現実をリアルに映し出すこの作品は、監督サンディア・スリがドキュメンタリー制作の経験を活かし、抑制的でありながら力強い演出を通して、一人の女性が偏見や危険に立ち向かう姿を丁寧に描いている。
夫の死によって、サントシュは家庭から混乱と理不尽に満ちた社会へ投げ出される。警察になることは本人の意思であったが、生活の経済的基盤を失った彼女にとっては他の選択肢はほとんどなかった。急激な変化の中で、彼女は警察署内の性差別的な構造の中で自分の立ち位置を必死に探しながら、珍しく女性同士である上司シャルマ警部から知恵を借りつつ、同時にセクシュアリティにまつわる微妙な緊張にも対処しなければならない。
さらに、サントシュは警察組織内の腐敗や不作為にどう向き合うか、底層社会のカーストや経済格差、地域間の不平等から生じる暴力や理不尽にどう対処するかという試練にも直面する。彼女がこれらの課題に正面から向き合う姿は、特権的な組織の内部に身を隠す他の警察官とは対照的であり、観る者に強い印象を残す。
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